指定難病の潰瘍性大腸炎とは
潰瘍性大腸炎とは、クローン病とともに炎症性疾患に分類される指定難病です。
大腸の粘膜に炎症が起こり、びらんや潰瘍が形成され、下痢、血便、腹痛などの慢性的な症状が繰り返されます。
「指定難病」と聞くと重い響きがありますが、適切な治療によって症状をコントロールし、以前と変わらない生活を送ることも十分に可能です。
男女とも10～30代の若い世代の患者が多いものの、10歳以下の子ども、高齢者にも発症します。国内の患者数は22万人と推定されており、決して珍しい病気ではありません。
潰瘍性大腸炎は、ただちに命に関わる病気ではありませんが、長く放置していると大腸がんのリスクが高くなると言われています。
「難病だから」「治らないから」と諦めず、一度当院にご相談ください。
クローン病との違い
潰瘍性大腸炎とクローン病は、ともにはっきりとした原因の分からない指定難病であり、消化管に慢性的な炎症が起こるという共通点を持ちます。比較的若い世代での発症が目立つという点も似通っています。
大きな違いは、その発症部位です。クローン病では、口から肛門のすべての消化管で炎症が起こり得ます（多いのは大腸・小腸）が、潰瘍性大腸炎では大腸でのみ炎症が起こります。加えて治療法も異なるため、正確な診断が欠かせません。
初期症状はある？
潰瘍性大腸炎の症状
潰瘍性大腸炎では、以下のような症状が良くなったり（寛解期）、悪くなったり（再燃期）を繰り返します。
比較的早い段階で現れる初期症状としては、血便と粘血便が挙げられます。粘血便とは、便に血液と粘液が混じっている・付着している便のことを指します。ただし、初期症状だからといって、必ず現れるわけではありません。
- 血便、粘血便
- 下痢
- 腹痛
- 便意があるのに便が出にくい
- 発熱
- 貧血
潰瘍性大腸炎の原因
潰瘍性大腸炎は指定難病であり、はっきりとした原因は解明されていません。
しかし近年では、免疫の異常によって、本来守るべきである自身の細胞を攻撃することが発症に影響しているものと考えられています。
免疫の異常は、腸内細菌叢の乱れ、食生活の欧米化、遺伝などが複雑に関与して起こると言われています。
潰瘍性大腸炎と合併症
潰瘍性大腸炎は、合併症の多い病気です。
重症化すると腸の閉塞・狭窄、穿孔に伴う大量出血、巨大結腸症などを合併し、緊急手術が必要になることがあります。大腸以外の合併症としては、口内炎、肝胆道系障害、関節炎、皮膚炎、目の病気（虹彩炎・ぶどう膜炎・虹彩毛様体炎）などが挙げられます。
また長く放置していると、大腸がんになるリスクも高くなります。
治療によって症状をコントロールし、寛解期を長く維持することで、これらの病気のリスクを下げることが可能です。
潰瘍性大腸炎の検査と診断
問診・診察では、いつからどのような症状があるか、症状がどのように変化しているか、既往歴・家族歴、服用中のお薬などについて、詳しくお伺いします。
その上で、以下のような検査を行い、診断します。
大腸カメラ検査
肛門から内視鏡を挿入し、大腸全体の粘膜の状態を観察し、炎症の程度・範囲を調べます。
検査の際には病変の組織を採取し、病理組織検査・確定診断を行います。
血液検査
炎症や貧血、栄養状態などを調べます。
便検査
便潜血、炎症の程度などを調べます。
また便培養検査を行い、病原性細菌の有無を調べることもあります。
腸閉塞などで大腸カメラ検査が困難な場合には、CT検査やカプセル内視鏡検査が行われます。これらの検査が必要になった場合には、速やかに提携する病院をご紹介いたします。
潰瘍性大腸炎の治療
治療の中心となるのは、薬物療法です。
潰瘍性大腸炎の治療では、症状の落ち着く寛解期をできるだけ長く維持すること、症状が強く出る再燃期をできるだけ短くすることを目的とします。
薬物療法
以下のようなお薬を、適切に使い分けます。
5-アミノサリチル酸薬
（5-ASA）製薬
軽症～中等症の潰瘍性大腸炎に対して使用します。
炎症を抑え、腹痛や下痢、血便といった症状の改善を図ります。
内服薬、注腸薬、坐薬があります。
副腎皮質ステロイド薬
中等症～重症の潰瘍性大腸炎に対して使用します。
炎症を抑える力が強く、症状の改善が期待できます。
内服または点滴で投与します。
免疫調節薬・免疫抑制薬
ステロイドが効かない・逆効果になる場合に使用します。
ただし、効果の個人差が大きいため、使用は慎重に判断します。
抗TNFα受容体拮抗薬
炎症を引き起こす物質に働きかける作用により、症状の改善を図ります。
点滴または皮下注射で投与します。患者さんご自身による自己注射での投与も可能です。
血球成分除去療法
患者さんご自身から採血し、血液成分の一部を除去した上で注射するという治療です。
ステロイドが効かない患者さんの再燃期に行われます。
手術
保存的な治療で十分な効果が得られない場合、大腸の穿孔・大量出血があった場合、大腸がんを併発している・その疑いがある場合など、手術が必要です。
手術や入院治療が必要になった場合には、提携する病院をご紹介します。