下痢の原因が分からない…
下痢には、さまざまな原因があります。また、1つの原因によって引き起こされていることもあれば、複数の原因が複雑に絡み合って引き起こされることもあります。
よく知られた原因としては、冷たいものや刺激物の摂り過ぎ、水分の摂り過ぎ、ストレスなどがあります。またそれ以外にも、感染症、炎症性腸疾患、薬の副作用などが原因となることもあります。
下痢は比較的身近な症状である一方で、ご自身で原因を突き止められないケースが少なくありません。病気の早期発見・早期治療のためにも、「体質だから」「治らないから」と諦めずに当院にご相談ください。
下痢の主な4つの種類
急性下痢
浸透圧性下痢
キシリトールなど、消化管内に吸収されにくい成分があると、浸透圧の上昇によって腸内の水分が多くなり、下痢が引き起こされます。また日本人に多い乳糖不耐症の方が牛乳や乳製品を摂取した場合も、同様の現象が起こり下痢の原因となります。
分泌性下痢
細菌の毒素、暴飲暴食といった腸への刺激によって、過剰に水分が分泌されて起こる便秘です。身体に良くないものを早く排出しようという防御機構の一種で、ある意味正常な反応と言えます。
そのため細菌やウイルスといった病原体による感染性腸炎の場合、原則として下剤を使用しません。
慢性下痢
蠕動運動性下痢
消化管の蠕動運動(内容物を先へ先へと送り出す運動)が活発になることで起こる下痢です。大腸での水分の吸収が追い付かず、内容物が固形になる前に排便してしまうのです。
過敏性腸症候群においては、このタイプの下痢が見られます。
滲出性下痢
腸内の炎症やびらん・潰瘍によって、血液・細胞内の水分が便に混じって起こるタイプの下痢です。腸の水分を吸収する力が低下しているために、このような現象が起こります。
潰瘍性大腸炎、クローン病などでこのタイプの下痢が見られます。
下痢が起こる場合に
考えられる病気
下痢が起こった場合、以下のような病気を疑います。下痢が長く続くことは、大腸や肛門を含めた体、そして心にも悪い影響を与えます。
下痢が続いている時、あるいは定期的に下痢が繰り返される場合には、お早目にご相談ください。
感染性腸炎
細菌やウイルスなどの病原体が身体に入り込むことで、腸管で炎症が起こります。
症状はさまざまですが、中でももっとも多いのが、下痢です。その他、吐き気・嘔吐、腹痛、発熱、血便などの症状も挙げられます。
過敏性腸症候群
大腸カメラ検査などで器質的な異常が認められないにも関わらず、大腸で慢性的な症状が続きます。大きく、下痢型・便秘型・混合型に分けられます。ストレスや自律神経の乱れが発症に影響しているものと思われます。
潰瘍性大腸炎
クローン病とともに炎症性腸疾患、そして指定難病である大腸の病気です。下痢・血便・腹痛を代表的な症状とします。その他、動悸や息切れ、めまいなどの症状が見られることもあります。免疫の異常が原因と考えられています。
クローン病
口から肛門まで、すべての消化管で炎症が起こりうるという点が、潰瘍性大腸炎との大きな違いです。ただ、実際の症状は大腸・小腸に集中しています。腹痛、下痢、体重減少などの症状が見られます。
虚血性腸炎
主に動脈硬化を原因として、大腸への血流が不足し、粘膜が障害され炎症を起こす病気です。突然、左側腹部~下腹部の痛みが現れ、続いて下痢、徐々に血便が認められるというのが、典型的な症状です。
大腸がん・大腸ポリープ
大腸がんや大腸ポリープが大きくなると、下痢や便秘が起こることがあります。その他の症状としては、血便、便が細くなる、腹痛、体重減少、貧血などが挙げられます。下痢と便秘が交互に繰り返されるケースもあります。
慢性膵炎
下痢、脂肪便(液状の白っぽい便)、腹痛、体重減少などの症状を伴います。主な原因としては、飲酒、喫煙、脂質異常症、甲状腺機能亢進症などが挙げられます。ただし、原因不明のケースも少なくありません。
下痢で受診するタイミングは?
たとえば冷たいものを食べた後、1回下痢があったけれどすっきりした・他に症状がないといった場合には、基本的にご自宅で様子を見て構いません。
しかし、以下に該当する場合には、お早目に当院にご相談ください。
- 下痢に加え、吐き気・嘔吐がある
- 下痢に加え、粘血便、黒色便(タール便)があった
- 2回以上の下痢があり、腹痛などの症状が続いている
- 下痢と便秘を繰り返している
- 1日1回の下痢が何日か続いている
一刻も早く受診すべき症状
特に以下に該当する場合は、すぐに当院にご相談ください。夜間等は、救急外来を受診します。
- 1時間に1回以上のペースで下痢が出ている
- 下痢に加え、真赤な血便が出た
- 下痢に加え、腹痛、38℃以上の発熱がある
- 下痢、嘔吐、発熱などがあるが、ぐったりして水分が摂れない
- 下痢に加え、意識が朦朧としている
下痢の場合の検査
問診・診察では、下痢の頻度・回数、下痢以外の症状、経過、最近の食生活、既往歴・家族歴、服用中の薬などについて詳しくお伺いします。
その上で、以下のような検査を行います。
血液検査・便検査
感染の有無や炎症の程度などについて調べます。
大腸カメラ検査
大腸の病気が疑われる場合には、大腸カメラ検査を行います。
必要に応じて、組織を採取して顕微鏡で観察する病理組織検査を行い、診断します。当院では、内視鏡専門医・指導医が、最新の内視鏡システムを使って大腸カメラ検査を実施します。鎮静剤を使用すれば、ほとんど痛み・苦しさを感じません。初めての方も、安心してご相談ください。
下痢の治療
下痢の治療法は、急性下痢の場合と慢性下痢の場合で大別できます。
急性下痢の治療
暴飲暴食が原因と思われる場合には、腸を休ませるために消化の良いものを摂ります。症状が落ち着いてからも、暴飲暴食は避けるようにしましょう。
原因が疾患の場合には、その疾患に応じて、整腸剤、抗菌薬などの薬物療法を行います。
なお感染性腸炎の場合、原則として下痢止めは使用しません。病原体の排出を遅らせてしまうためです。市販の下痢止めの自己判断での使用もお控えください。
慢性下痢の治療
原因が疾患にある場合には、その疾患に応じたさまざまな薬物療法を行います。
並行して、食生活の改善を図ります。症状が落ち着くまで消化の良いものを取り、その後は下痢および疾患の再発を防ぐため、根本からの食事改善を行います。
体質だからと諦める前に
一度受診してみませんか?
下痢は比較的身近な症状であるためか、一般に病気と結び付けられにくいという側面があります。よく耳にするのが、「体質だから」「年中下痢だから」「どうせ治らないから」といった声です。
確かに、体質によって下痢になりやすい・なりにくいということはありますが、だからといって放置していいわけではありません。このページでご説明した通り、背景に疾患が隠れているケースも少なくないのです。
下痢が当たり前の生活から抜け出し、体と心の健康、明るい毎日を取り戻しましょう。もちろん、最近下痢が続いている、急にひどい下痢が出たといった方も、お気軽にご相談ください。